「痛くない」を探す

痛みを感じる原因として、「脳の誤作動が起きてしまう」というものはあります。これは例えば、腕を上げた時に酷い痛みを感じたとします。この時に痛みで腹を立てたとしましょう。すると、脳が痛みと腹を立てたことを連動して記憶してしまい、腹を立てた時に同時に痛みも起こるようになってしまうという誤作動です。これにより、例えば「腕を上げると肩が痛い」という状態が長引いた時、脳は「腕を上げると肩が痛む」と認識してしまいます。もちろん初めは本当に痛みがあったのでしょうが、もし治ってきた時にも痛みを増幅して感じてしまったり、ストレスにより自然治癒力が落ちてしまい、治るべきものの完治も遅くなってしまう場合があります。これを解消するには、悪い記憶を良い記憶で書き替える必要があります。

次項で詳しく述べますが、痛みが起こらない快適なポジション(ゼロ・ポジション)を探すこともひとつの対策になります。脳は簡単に誤作動を起こすということは分かったと思いますが、これを逆手に取るのです。例えば「肩が痛くてどうしても腕が上がらない」という状態があったとします。実際の痛みももちろんですが、恐らく「腕を上げたら余計に肩が痛むから」という脳が誤認識をしてる部分もあるでしょう。まず、肩を脱力させて力を抜いてください。そのまま色々な方向に腕を上げてみます。もちろん、無理のない範囲で上げてください。こうして様々な方向に持ち上げているうちに、痛みを感じないで上がる姿勢を見つけることができると思います。この時に、「腕を上げても痛みを感じなかった」ということを脳が自覚します。こうして痛みを感じない、ということを脳に覚えさせて、脳を再教育するのです。

慢性痛とは

人間には「自然治癒能力」が備わっていることについて述べてきました。そうは言っても、首や肩、膝などに慢性的な痛みがある人も多くいます。もちろん心因性の原因もありますが、もうひとつ多い原因として「脳の錯覚」というものがあります。これが痛みを長引かせたり、増幅させてしまうのです。

簡単な痛みの仕組みを見ていきましょう。痛みとはそもそも「傷を負った」という情報が、脳に伝わって始めて痛みを感じるという仕組みになっています。例えば腰痛の場合であれば、「腰」→「末梢神経から脊髄(神経)」→「脳」という順番で伝達が行われています。研究のひとつの説によると、「痛みを感じるのは脳の中の、前頭葉の一部」と考えられています。この部分が、痛みを緩和されるという指令を出しています。ということは、この部分の活動が低下をしてしまうと「脳の誤作動が起きてしまう」可能性があるのです。例えば、「もう怪我は治っているのにずっと痛みだけは感じている」「少しの刺激でも大きな痛みを感じる」「痛みが記憶となって再生されてしまう」などです。これは慢性痛の症状のひとつと言えます。「痛い」と感じたことは、脳に記憶されてしまいます。更にその記憶が何度も(慢性的に)行われることで、痛みの記憶は強化されていってしまいます。痛みを感じた時にイライラした。不安になった。こういった感情も記憶されてしまうので、別のことでイライラすると、同時に痛みを感じてしまう、「痛みのスパイラル」に陥ってしまうのです。

これらを断ち切る方法は、「記憶を書き替える」というのがひとつの手段と言われています。「痛いと感じたが、こういう対処をしたことで解消できた」という前向きな記憶で上書きしていくのです。